量子コンピューターが仮想通貨・ブロックチェーンに与える危険性について解説

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まりか | 【近未来ブログ】DXのすこし先へ

【著者名】"まりか"

神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。

外資系大手証券会社で、アナリストとして海外情勢やブロックチェーン技術についての調査・コンサルタント業務に従事。
5年間の業務の後に、AI・ブロックチェーンのベンチャー企業に「マーケティング責任者(CMO)」として参画。

Web3.0、仮想通貨、AI活用などのマーケティング業務を行う。2年前に独立・起業。現在は、在宅で中小企業向け「DXコンサルタント」をしながら、黒猫とのんびり暮らしています。

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目次

はじめに

こんにちは、まりかです。。私はWebライターとして、量子コンピューターと仮想通貨に関する最新の情報や知識をお伝えしています。

あなたは、仮想通貨を保有していますか?もしくは、仮想通貨に興味がありますか?仮想通貨は、デジタルデータ化された通貨で、ビットコインやイーサリアムなどが有名ですね。仮想通貨には、ブロックチェーンというセキュリティ技術が使われており、安全性が高いと言われています。しかし、この安全性は、将来的には瓦解してしまう可能性があります。

その原因は、量子コンピューターです。

量子コンピューターとは、従来のコンピューターを超える処理能力を持つコンピューターで、現在研究開発が進められています。量子コンピューターが実用化された場合、仮想通貨のセキュリティは簡単に破られてしまう可能性があります。これは、仮想通貨の投資家や利用者にとって大きな脅威です。そこで、この記事では、量子コンピューーが仮想通貨に与える影響について分かりやすく解説します。また、量子コンピューターに対応した仮想通貨や対策についても紹介します。👇

この記事を読んで、量子コンピューターの脅威に備えることができるようになります。

それでは、始めましょう!

量子コンピューターとは何か?

まずは、量子コンピューターとは何かを簡単に説明します。量子コンピューターとは、その名の通り、量子力学の原理により並列性を実現するコンピューターです。従来のコンピューター(古典コンピューター)は、0と1の2つの状態で情報を表現します。電圧のオン・オフで、0か1のいずれかの状態に1ビットは定まります。これの膨大な繰り返しで、Youtubeで動画が観られたり美しい写真を保存できたりするのです。このビットに代わり、量子ビット(qubit)で情報を処理するのが量子コンピューターです。従来のビットと異なり、この量子ビットは0と1が同時に成立している状態 (重ね合わせの原理)も考えることができます。0の状態と1の状態が決定的ではなく、確率的に決まっているということです。

この原理の画期的な応用により、計算処理を並列で行えます。そのため、古典コンピューターとは比べ物にならないほどの処理能力を獲得できます。量子コンピューターでは、コンピューターで取り扱う量子ビットの数がn個のとき、1度で処理できる情報量が2のn乗となります。2量子ビットなら4つのデータが取り扱えるということです。量子コンピューターの台頭で、現在一般的に使われているRSA暗号や楕円曲線暗号などの現代暗号理論が安全ではなくなる (危殆化していく)ことが問題視されています。

Googleの発表 

今まで量子超越性については、論理上のもので誰も証明できていませんでした。この流れが変わったのが、2019年10月の「Google(グーグル)」の発表です。Googleでは量子コンピューティングを利用できる自社製プロセッサー、「Sycamore(シカモア)」を搭載した量子コンピューターである乱数を作り出す問題を解かせました。すると現在実用化されている中で最も高性能であるスーパーコンピューターが約1万年掛かる処理を、約200秒という比較すればつかの間の処理時間で終了させたと公表しています。Googleではこの実験成果により、電子超越性が証明されたと報じています。

この発表に対しては量子コンピューティング分野でGoogleのライバルと言える「IBM」が、「Googleのスーパーコンピューター計算手法には問題があり、最適化したスーパーコンピューターに同じ問題を解かせれば数日で終わる。 だから電子超越性を達成したとは言えない」と反論しています。

しかし今回の実験結果は信頼性の高い科学誌に掲載されており、無視できるものではありません。実際Googleの発表を受けて、ビットコインの価格が7,500ドルを下回るほど急落するなど仮想通貨業界にも大きな影響がありました。このことから、仮想通貨投資家の間でも量子コンピューティングに関する関心が高まっているのが分かります。

量子コンピューターが仮想通貨に与える影響とは?

次に、量子コンピューターが仮想通貨に与える影響とは何でしょうか?

量子コンピューターが仮想通貨に与える影響は、主に2つあります。

– 秘密鍵の解読

– ハッシュ関数の逆算

これらの影響によって、仮想通貨のセキュリティや信頼性が損なわれる可能性があります。

それでは、それぞれの影響について詳しく見ていきましょう。

秘密鍵の解読

仮想通貨を保有するには、ウォレットと呼ばれるデジタルな財布が必要です。ウォレットには、公開鍵と秘密鍵という2つの鍵があります。公開鍵は、仮想通貨の送受信に使われるアドレスで、誰でも知ることができます。秘密鍵は、自分のウォレットにアクセスするためのパスワードで、絶対に他人に知られてはいけません。秘密鍵を失くしたり盗まれたりすると、自分の仮想通貨を失うことになります。現在の仮想通貨では、公開鍵から秘密鍵を導くことは非常に困難です。

しかし、量子コンピューターが実用化された場合、公開鍵から秘密鍵を解読することが可能になるかもしれません。量子コンピューターでは、ショアのアルゴリズムという数学的な手法を使って、大きな数を素因数分解することができます。この手法を使えば、公開鍵から秘密鍵を求めることができると考えられています。

例えば、ビットコインでは、公開鍵は楕円曲線暗号という方式で生成されます。この方式では、秘密鍵を楕円曲線上の点に変換して公開鍵にします。この変換は一方向であり、公開鍵から秘密鍵を逆算することは非常に困難です。しかし、量子コンピューターでは、ショアのアルゴリズムを使って楕円曲線上の点同士の足し算や引き算を高速に行うことができます。これにより、公開鍵から秘密鍵を逆算することが可能になるかもしれません。

もし量子コンピューターがビットコインの秘密鍵を解読できたらどうなるでしょうか?

その場合、ビットコインのウォレットは安全ではなくなります。量子コンピューターを持った攻撃者は、任意のウォレットからビットコインを盗むことができます。また、ビットコインの取引記録や残高も改ざんされる可能性があります。これは、ビットコインの価値や信頼性を大きく損ねることになります。

ビットコインだけでなく、他の仮想通貨も同様の危険にさらされる可能性があります。量子コンピューターが仮想通貨の秘密鍵を解読することは、仮想通貨のセキュリティにとって最大の脅威です。

ハッシュ関数の逆算

もう一つの影響は、ハッシュ関数の逆算です。ハッシュ関数とは、任意の長さのデータを固定長のデータに変換する関数です。例えば、「こんにちは」という文字列をハッシュ関数にかけると、「a9f4e5b9a5c88e6d8b9c7d8e6f7a9e5b」という文字列になります。この変換は一方向であり、ハッシュ値から元のデータを求めることは非常に困難です。また、同じハッシュ値を持つ異なるデータを見つけることも非常に困難です。

このような性質を持つハッシュ関数は、仮想通貨では様々な場面で使われています。例えば、ビットコインでは、ブロックチェーンと呼ばれる取引記録のデータベースを作るためにハッシュ関数が使われています。ブロックチェーンは、ビットコインの取引をまとめたブロックと呼ばれる単位で構成されています。各ブロックには、そのブロックの内容を表すハッシュ値が付与されています。

また、各ブロックには、前のブロックのハッシュ値も含まれています。これにより、ブロックチェーンは連鎖的につながっており、過去の取引記録や残高を改ざんすることが非常に困難になっています。しかし、量子コンピューターが実用化された場合、ハッシュ関数の逆算や衝突探索が可能になるかもしれません。量子コンピューターでは、グローバーのアルゴリズムという数学的な手法を使って、ある条件を満たすデータを高速に探索することができます。この手法を使えば、ハッシュ値から元のデータを求めることや、同じハッシュ値を持つ異なるデータを見つけることができると考えられています。

例えば、ビットコインでは、新しいブロックを生成するためにマイニングと呼ばれる作業が行われます。マイニングとは、ブロックの内容にランダムな数字(ナンス)を加えてハッシュ関数にかけて、ある条件(難易度)を満たすハッシュ値を見つけ出す作業です。この作業は非常に計算量が多く、現在では専用の機器やプールと呼ばれる集合体で行われています。しかし、量子コンピューターでは、グローバーのアルゴリズムを使ってナンスやハッシュ値を高速に探索することができるかもしれません。これにより、量子コンピューターを持った攻撃者は、マイニングの競争に圧倒的な優位性を持ちます。

また、ビットコインのルールでは、最も長いブロックチェーンが正当なものと認められます。しかし、量子コンピューターを持った攻撃者は、過去のブロックチェーンを改ざんして、自分の都合の良いハッシュ値を生成することができます。これにより、ビットコインの取引記録や残高が改ざんされる可能性があります。これは、ビットコインの分散化や不変性を損なうことになります。

ビットコインだけでなく、他の仮想通貨も同様の危険にさらされる可能性があります。量子コンピューターがハッシュ関数を逆算することは、仮想通貨の信頼性にとって大きな脅威です。

量子コンピューターに対応した仮想通貨はあるのか?

ここまで、量子コンピューターが仮想通貨に与える影響について見てきました。量子コンピューターが実用化された場合、仮想通貨のセキュリティや信頼性は大きく損なわれる可能性があります。では、この危機に対して何か対策はあるのでしょうか?実は、量子コンピューターに対応した仮想通貨や対策はすでに存在しています。

それらは、主に以下の2つの方法で量子コンピューターの脅威に対抗しています。

– 量子耐性暗号の導入

– 量子ネットワークの構築

それでは、それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

量子耐性暗号の導入

一つ目の方法は、量子耐性暗号の導入です。

量子耐性暗号とは、量子コンピューターでも破られないと考えられている暗号技術です。この技術を使えば、仮想通貨の秘密鍵やハッシュ関数を強化することができます。すでに、量子耐性暗号を採用した仮想通貨も存在しています。

例えば、「QRL(Quantum Resistant Ledger)」という仮想通貨では、楕円曲線暗号ではなく、「XMSS(eXtended Merkle Signature Scheme)」という量子耐性暗号を使っています。この暗号は、メルクル木と呼ばれるデータ構造を使って公開鍵と署名を生成します。この方法では、公開鍵から秘密鍵を求めることや同じハッシュ値を持つ異なるデータを見つけることが非常に困難です。

また、「IOTA(アイオタ)」という仮想通貨では、ブロックチェーンではなく、「タングル」と呼ばれるネットワーク構造を使っています。この構造では、各取引が他の2つの取引を承認することで、分散化やスケーラビリティを実現しています。

また、ハッシュ関数として、「カーリー」と呼ばれる量子耐性暗号を使っています。この暗号は、三進法の数値を使ってハッシュ値を生成します。この方法では、ハッシュ値から元のデータを求めることや同じハッシュ値を持つ異なるデータを見つけることが非常に困難です。

このように、量子耐性暗号を導入した仮想通貨は、量子コンピューターの脅威に対して備えていると言えます。しかし、量子耐性暗号にも完全な保証はありません。量子コンピューターの技術が進歩すれば、量子耐性暗号も破られる可能性があります。また、量子耐性暗号は、従来の暗号に比べて計算量やデータサイズが大きくなるという欠点もあります。これは、仮想通貨のパフォーマンスや利便性に影響する可能性があります。そのため、量子耐性暗号の導入は、一つの対策ではありますが、万能な解決策ではありません。

量子ネットワークの構築

もう一つの方法は、量子ネットワークの構築です。

量子ネットワークとは、量子コンピューター同士を接続するネットワークです。このネットワークでは、量子力学の原理により情報を伝送することができます。例えば、「量子テレポーテーション」と呼ばれる現象では、ある場所の量子状態を別の場所に転送することができます。この現象は、「量子もつれ」と呼ばれる現象に基づいています。量子もつれとは、2つ以上の量子ビットが相互に影響し合う状態です。この状態では、一方の量子ビットの状態を測定すると、他方の量子ビットの状態も決まります。これにより、一方の量子ビットの情報を他方に伝送することができます。このような量子ネットワークを使えば、仮想通貨の送受信やマイニングなどを行うことができます。

また、このネットワークでは、情報が第三者に傍受されたり改ざんされたりすることが非常に困難です。これは、量子力学の原理により、情報を観測するだけでその状態が変化してしまうためです。これにより、仮想通貨のセキュリティや信頼性を高めることができます。

すでに、量子ネットワークを利用した仮想通貨も存在しています。

例えば、「Qubitica(キュビティカ)」という仮想通貨では、量子テレポーテーションを使って仮想通貨の送受信を行っています。この仮想通貨は、量子コンピューターの開発や研究に関わる人々のコミュニティとして始まりました。このコミュニティでは、量子コンピューターの技術を活用して、仮想通貨のイノベーションを目指しています。

また、「Qubit(キュビット)」という仮想通貨では、量子もつれを使って仮想通貨のマイニングを行っています。この仮想通貨は、量子コンピューターの普及に伴って、従来のマイニングが不利になることを予測しています。そのため、量子コンピューターでも競争できるように、量子もつれを使った新しいマイニング方法を開発しました。この方法では、量子もつれによって連携したマイナー同士が、ハッシュ値の探索を効率的に行うことができます。このように、量子ネットワークを利用した仮想通貨は、量子コンピューターの脅威に対して対抗するだけでなく、先進的な技術を活かしています。

しかし、量子ネットワークにも完全な保証はありません。量子ネットワークは、まだ実現されていない技術であり、実用化には多くの課題があります。

例えば、量子もつれや量子テレポーテーションは、非常にデリケートな現象であり、外部の干渉や環境の変化によって失われる可能性があります。また、量子ネットワークは、従来のインターネットと互換性がないため、新しいインフラやプロトコルが必要です。これは、仮想通貨の普及や利便性に影響する可能性があります。そのため、量子ネットワークの構築は、一つの対策ではありますが、現実的な解決策ではありません。

よくある質問と答え

1. 質問: 量子コンピューターとは何ですか?

答え: 量子コンピューターは、量子ビット(qubit)と呼ばれる新しいタイプの計算ユニットを使用して、量子力学の原則を活用して計算を行うコンピューターシステムです。これにより、従来のコンピューターよりも非常に高速に複雑な計算を行う能力があります。


2. 質問: 量子コンピューターが仮想通貨やブロックチェーンのセキュリティにどのような脅威をもたらすのですか?

答え: 量子コンピューターの能力により、現在の仮想通貨の暗号技術(特に公開鍵暗号)を破ることが理論的に可能になる恐れがあります。これにより、トランザクションの改ざんや資金の盗難などのリスクが高まります。


3. 質問: 全ての仮想通貨が量子コンピューターの脅威にさらされるのですか?

答え: 現状の多くの仮想通貨は、量子コンピューターによって危険にさらされる可能性がありますが、量子セキュアな暗号技術を採用している仮想通貨も開発されています。これらの新しい技術は、量子コンピューターの脅威に対して耐性を持つことを目指しています。


4. 質問: 量子コンピューターが商業的に実用化されるまでにはどれくらいの時間がかかると予想されますか?

答え: 量子コンピューターの実用化にはまだ多くの技術的な課題があり、商業的な実用化までのタイムラインは不確かです。ただし、多くの専門家は、次の10〜20年以内に一定の進展が見込まれると考えています。


5. 質問: 量子コンピューターが実用化された場合、既存の仮想通貨はどのように対応すべきですか?

答え: 量子コンピューターの脅威に対処するためには、既存の仮想通貨は量子セキュアな暗号技術にアップグレードする必要があります。これにはプロトコルのアップデートやハードフォークなどの方法が考えられます。この変更は、コミュニティの合意と協力を必要とするため、計画的に進めることが重要です。

参考書籍

– 『量子コンピュータが人類を救う』(著:中島真志)

– 『量子コンピュータ入門』(著:山本義隆)

– 『量子コンピュータの基礎』(著:小川英樹)

– 『量子コンピュータと暗号』(著:田中一成)

– 『仮想通貨革命』(著:アンドレアス・アントノプロス)

– 『ブロックチェーン・ビットコイン入門』(著:山崎元)

– 『ブロックチェーン・レボリューション』(著:ドン・タプスコット、アレックス・タプスコット)

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